手続きを簡略化する便利な制度を行政書士が解説
「相続手続きって、なんでこんなに面倒なんだろう?」
銀行、法務局、証券会社…相続が発生すると、亡くなった方(被相続人)の財産を引き継ぐために、さまざまな機関で同じような書類を何度も提出する必要があります。
そんな煩雑な手続きを一気に簡略化できる制度が、「法定相続情報一覧図の写しの交付制度」です。
このコラムでは、制度の概要からメリット、申請方法までをわかりやすく解説します。
■ 法定相続情報一覧図とは?
法定相続情報一覧図とは、法務局が発行する相続人の一覧表のようなものです。
これは、被相続人の戸籍をもとに作成され、「誰が相続人なのか」「続柄はどうなっているか」をひと目で確認できる図として整理されたものです。
この図を法務局に提出して認証(登記官の認証)を受けることで、「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
この写しは、銀行口座の名義変更、不動産の相続登記、保険金の請求など、さまざまな相続手続きに使うことができます。
■ なぜ便利? 3つのメリット
① 書類を何度も提出しなくて済む
相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍・住民票などを、各所に何セットも提出しなければなりません。
法定相続情報一覧図を使えば、それらの戸籍の束の代わりに1枚の一覧図だけで済むケースが多く、大きな負担軽減になります。
② 無料で取得できる
手続きそのものは無料です。
必要なのは、戸籍・住民票・申請書の作成などですが、印紙代などの費用は一切かかりません(※戸籍取得費は別途かかります)。
③ 不動産の登記申請と併用できる
相続登記の申請と同時に法定相続情報一覧図の申請も可能です。
今後、相続登記の義務化(令和6年4月施行)により、不動産の相続登記は3年以内の申請が必要になります。
その際、この制度を併用すれば、手続きをまとめて効率化できます。
■ 申請に必要な書類とは?
以下の書類を準備して、法務局に申請します。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の住民票(またはマイナンバーのない住民票)
- 法定相続情報一覧図(自作可)
- 申出書(様式は法務局HPからダウンロード可)
書類が正確であれば、1週間ほどで「写しの交付」が受けられます。
交付された一覧図は、5通、10通など複数枚を無料で発行してもらえるため、各機関への同時提出にも対応できます。
■ 自分でやる?行政書士に依頼する?
もちろん、ご自身で申請することも可能ですが、「戸籍が複雑」「どこまで遡ればいいかわからない」「間違いなく作成したい」という方は、行政書士に依頼することで正確かつスムーズに取得できます。
特に、高齢の相続人がいる場合や、相続人が複数の地域にまたがっている場合など、専門家のサポートが安心です。
■ まとめ|今後の相続手続きに必須の1枚
法定相続情報一覧図は、**現代の相続手続きの“時短アイテム”**と言えます。
一度取得すれば、今後の相続手続き全般に使えるため、非常にコストパフォーマンスが高い制度です。
相続が発生したら、まずはこの制度の利用を検討してみてください。
当事務所では、戸籍の収集から一覧図の作成・申請まで、すべてサポートしております。
お気軽にご相談ください。